将来のこの国

 昨日の父の言動を振り返ると、あまり、我々を困らせるようなことはしていなかったように思える。前にも書いたが、深刻に自分のアイデンティティについて悩むかと思うと、いきなり、カッターの刃を変えはじめたり、日常の作業をおこなったりする。正直、父の頭の中のメカニズムについては、相変わらず、謎のままである。

 つくづく、思うことは、自分も結婚していればなあ、と思う。人一人を介護するのに、2人はやはりきつい。デイケアとか行政のサービスは私のような人間のために作られたものなのだろうが、今の段階では介護認定も受けておらず、中々そうしたサービスを活用できない。また、こういってしまうと身も蓋もないが父はかなり元気である。この点がいつも歯痒いのである。いつまでも元気でいてほしいと思いつつ、もう少し大人しくくれという思いが、私の頭を錯綜する。

 唐突に話は変わるが、2045年ごろには、この国の認知症患者は老齢人口の5人に1人になるとどこかのネット記事で読んだ。恐らく私もこの世代に含まれるのかもしれないが、父の姿を見てしまった今となっては、とにかく、認知症になって、みんなの迷惑にはならない用にしなければという思いである。