走る男

 昨日、母が病院に行ってしまい、私と父が留守番をしていた。父は相変わらず、ボケっとテレビを見ていたりしていた。

 一つやらかしてしまったことがあり、それは、母が外出する直前に私と父に洗濯屋へ洗い物を出しておいて欲しいと頼まれていたのだが、洗濯屋が来た際、父はその洗い物を出さなかった。私は慌てて、父に注意を促したのだが、洗濯屋はすでに去ってしまった。慌てて父は外に飛び出し洗濯屋を追いかけた。久々の外出である。しかし、洗濯屋は車に乗り、父の追跡を振り切って行ってしまった。父は何年ぶりかわからないが走ったことになる。しかも短パンだったので足のレッグパックを露出したままである。

 なんというか、私も父の記憶力を見誤っていた。2時間前ぐらいに母からたのまれていたことを父はあっさり忘れてしまっていたのである。私は認知症の凄まじさを甘く見ていた。私が予め全ての作業を対応すべきだった。母の帰宅後私は謝罪した。父は・・・すっかり自分のこと等を棚に上げて、母の帰宅が遅いとギャーギャー怒っていた。これである。これがこの男の真骨頂であり、長生きの秘訣である。とにかく自分が悪い等ということは毛ほども感じない。いや感じたとしてもすぐに忘れる。これが長生きにとって重要なのである。