昨日は、暑かったからなのか、父は終日おとなしかった気がする。あと、大人しかった理由として、日曜日だったということもあるのかもしれない。日曜日は元の勤め先である学校も休みだったので、その時の記憶に基づいて、大人しくしていたのかもしれない。それでも、以前、5月頃、日曜日にもかかわらず、父は元の職場に行ったことがある。当然、人は誰もおらず、結局、警備員室から、自宅に電話してきて、訳の分からないことを言った後、しばらくして家路についた。「自分は騙された」、「何か裏であるのかもしれない」、「自分は騙されて呼び出された」等と陰謀諭めいたことを言っていたのが印象的であった。
この時のエピソードだけではなく、父は発症してから、嘘を平気でつくようになった。傍から見たら、わかりやすいウソを良くつくようになった気がする。もともと、そういう人だったのかもしれない。実は、もしかしたら、父の頭の中では嘘をついているという意識は無く、真実のものとして自分の言動の整合性がとれていると確信しているのかもしれない。
話は昨日の話に戻すが、昨日は、得意の電話攻勢も少なかった。単純に暑かったから、外に出たくない、明日学校に行きたくないという気分であったのかもしれない。ずいぶん現金な話だと思う。
尤も、大人しいということは、私にとっては、とてもありがたいことである。自分としては、この暑さ自体は不快ではあるが、色々父の動きを止めることができたのであれば、嬉しい誤算のように思えた。
ここからは、これまでの備忘録である。父は、4月半ばに発症して以来、ひたすら電話をかけて、そして上でも書いたように元の職場に押しかけるようになる。元の職場のには、父が現役であった頃、一緒に働いていた人もまだおり、そうした人々が、職場に押しかけた父をお出迎えして、機嫌を取って、父を自宅に送り返してくれた。父は、何が目的で行ったのだろうか、授業でもする気だったのであろうか。ところが、行ったら行ったで、職場の空気に触れて、職場の方々のおもてなしで気分がよくなってしまったようである。本当に現金な話だと思う。以後、しばしば、職場を押し掛けるようになるが、その度に職場の方々の努力により、その度に父は機嫌よく家に戻ることができた。父とは違って、朝から忙しい方々が貴重な時間を割いて対応してくれたことに感謝しかない。今にして思えば、家にいると、自分の現実を家族が理詰めで、時に苛立ちながら説明するのを聞いて、うんざりしていたのかもしれない。ただし、そうして、外に出れば出るほど、我々家族の苛立ちはどんどん強くなっていくし、不安が強くなるのである。