コンタクトレンズを発見

 昨日の父は、相変わらず、馬鹿みたいに元の職場や元の職場の同僚に電話攻勢を仕掛けていた。10年前に捨てたタイプライター発見のため、家の中のものをひっくり返して探していた。私はもう疲れるのも嫌なので、そのままにしていた。最低限の会話しかしていなかった。母も自分の薬と父の薬を取りに病院に行っており、私と父はほとんど会話をしなかった。会話をすれば、またかみ合わない会話が続くのだと思うと、私はどうしても話す気になれなかった。

 夜中、母がいきなり、コンタクトレンズが無いと騒ぎ、父もギャーギャー騒いでいた。私は、透明で小さいレンズを探すのは難しい、眼科に明日行ってくれと言って、寝た。母に対して酷薄、冷酷な私の態度に苛立つ人もいるかもしれないが、私は、昨日は、なにか色々なことにうんざりしていた。ところが父は、執拗に夜中の1時半過ぎにあちこち探し、遂にレンズを見つけた。父に対して、久しぶりに感心した。元の職場への執拗なストーカーっぷりに相通じるものがあるとはいえ、よくやったと思う。

 本日、このことを聞いたら、何故か覚えていた。元の職場の事はすぐに忘れてしまうのに、このことは忘れなかったようである。何というか都合の悪いことはすぐに忘れて、こうした自分の御手柄話はしっかり覚えている。認知症というのはこういう病気なのである。