5分で御帰宅

 昨日、父はカフスボタンがなくなったと大騒ぎしていた。何故か知らないが、昨日は元の職場に行く気満々で、スーツやコートを用意していた。ところが、カフスボタンが無くなったことで、御出勤も中断してしまった。私も母も最初は探すのを手伝ったが、正直、もう面倒くさくなり途中で放置した。恐らく、父のスーツのポケット当りに入っているような気もするが、なにせ、たくさんスーツを持っており、全部ひっくり返すのは面倒くさかったので、私は放置した。母はどう思ったのか分からないが、やっぱり面倒くさくなったのだろうと思う。我々はこうして、自分達にかかるストレスをいかに少なくしていくかを少しずつ学びつつある。本当に父の言動に一々付き合うと凄まじい勢いで体力と言うか、精神的な部分も含めての色々なものが削られていくのである。これは介護経験のある人には共感してもらえると思う。

 しばらくして、カフスボタンが見つかったのかどうかわからないが、出かけたようである。そして5分後、父は戻ってきた。「なんか疲れたので帰ってきた」、「今日は行くのやめた」とのことである。もう、いくら無限の体力や筋力を誇る父をもってしても、元の職場までの3~40分の通勤は難しいかと思った次第である。父はさっさと自室にて着替えて、後は、ボケっと何事もなかったかのようにテレビを見ていた。

 なんというか、変わらないと思いつつも着実に「終わり」へと向かいつつあることを少し実感させられた一日であった。