数時間で忘却する

 昨日、父は仕事の件で何度も電話していた。午前中に、休日にもかかわらず、元の同僚の皆さんの自宅に電話をかけて、そのたびに、先方から、「あとは大丈夫です、こちらでやります」といった言葉を父にかけて頂いていた。父も嬉しかったらしく、何度も先方の同僚の方々に感謝していたし、私や母にも安堵の表情を浮かべて嬉しそうに話していた。ところが、午後から夕方にかけて、また、同じ仕事の件で、あちこちに電話をかけ始めた。私が、「その件はさっき終ったんじゃなかったのか」と言ったら、あれは正式のものではないから、等と言って、執拗に電話をかけるのを止めなかった。さすがに皆さん、うんざりとしたのか、電話は一つもつながらなかった。本当に申し訳ないと私も思いつつも、もはや電話をかけるのを止めるエネルギーが私にも母にも無くなりつつある。自分達の手元の仕事や作業で精一杯の状況で父の相手をするのは本当にしんどい。父の電話攻勢を食らった元の同僚の方々には、後ほど、お中元でも何でも送る必要があるように思える。もっとも、そんなもの先方も貰っても嬉しくはないだろうが。

 昨日は、ずいぶん遅くまで起きていたようで、後から母に尋ねると、父は今度受ける病院の検査が高いだのなんだの話していたようである。今となっては、本当にどうでもいいことである。

 何度も何度も、一日に同じことを繰り返す。言っても言っても忘れてしまい、同じことを繰り返す。このつらさはボディブローのように母や私を疲労させる。もちろん電話攻勢を受けた方々も同様であろう。何時までこんなことが続くのであろうか。